第1章 序章
彼の一言で
疑問も雑念も、全てが吹き飛んだ
ただ、真っ白になった
真っ直ぐ見つめる瞳にたじろぎ、今度は私が視線を彷徨わせる
「だめ?」
『っ…!』
ダメな訳ない。ほら、他の人だって別に名前で呼んでるって言うし。ねえ。だから、それと同じだし
誰かに言い訳するように、脳内で言葉が行き交う
『駄目じゃ、ないよ。研磨くん』
精一杯、普通を装って微笑んだ
すると彼はより一層眉間に皺を寄せ
「…くん、も要らない。取って」
『えええ…』
なんだこの子は。意外と我儘で横暴だ
『………研……磨』
意を決して応えてみた
彼は「――…うん」と、悪戯っぽく笑ったので、なんだか私も満足してしまう