第1章 序章
それからいつもの家路を、他愛もない互いの話をしながら進んだ
孤爪くんには幼馴染のクロさんがいて、同じバレー部の主将だとか
ゲームが好きで、バレー以外の時間はほとんどゲームをしているんだとか
『ねえ、また部活終わりにバレーの練習見に行ってもいい?』
「え、いいけど…つまんないよ?」
『ううん!プレーしてる時の孤爪くんかっこ良かった!』
「…さん、発言はもうちょっと考えてからした方が良いと思うよ」
『ええええっ』
バカだと思われたことにショックを受ける
いや、そうなんだけどね!?
でも今のはホントに思ったこと言っただけなのに……
「……ねえ」
突然、彼が立ち止まり
少し先へ歩いてしまった私は振り返る
『どうしたの…?』
口籠る彼に首を傾げる
「……ごめん、なんでもない」
『絶対なんでもなくないやつじゃん』
「ぅっ……」
視線を彷徨わせる彼を見つめ、次の言葉を待つ
「………孤爪、って……おれ、呼ばれ慣れない」
『?』
紡がれた言葉に、どこか肩透かしをくらう
呼ばれ慣れてない…?そうかな?
確かクラスの人達とかはそう呼んでた気がするんだけど…
「監督も、みんなも…下の名前で呼ぶから」
『そっ……か……?』
どこか腑に落ちないがそう返すと、彷徨っていた瞳がこちらを捉える
「だから、研磨って呼んでよ」