第1章 序章
『ッ……!!』
目の前の彼が恥ずかしげもなくそんなことを言うもんだから、私の顔は留まることなく熱を帯びる
「…あ、ごめん。かっこいいってあんまり女子って嬉しくないよね」
『ッ嬉しい…!!嬉しいから…!』
夜で良かった。こんな紅い顔見られたら恥ずかしくて死ねるもん
「さんっていつからバンド始めたの?」
『あ…高校からだよ』
「それであんな上手いもんなの?」
『上手くはないんじゃないかな…?声の出し方とか絶賛勉強中だし』
「ふーん。まあ、おれそういう基準よく分からないし。さんがそう言うならそうなのかもね」
孤爪くんはそう言いながらも、どこか腹落ちしない様子だった
『孤爪くんは?いつからバレーやってるの…?』
知りたくなった、彼の事をたくさん
「え、小さい頃から…?」
『長いんだね』
「その間ずっと、ちゃんとやってた訳じゃないし、おれはそんな…他の人達に比べたらやる気も向上心もない」
『……孤爪くんって意外と喋るんだね』
「………」
不服そうに眉を顰める彼の豊かな表情も、あの日話し掛けて貰えなかったら知らないままだったんだ