第2章 ローズ・マダー
伺うような目に、縋り付くような目を向けたけど、だめだった。
「…二人で決めろ…」
そう呟いたチーフの目にも、怒りが見えた。
ちらりと翔を見ると、背を向けた。
真っ暗な中に、放り出された気分になった。
…そうだよ…
こうなることはわかってたじゃないか…
今、ここでこんな時期にこんなことを言い出せば、俺の扱いがどうなるかなんて…
ここ2年考え尽くして、わかってたはずだ。
チーフは翔のマネージャーだった頃から、一番長くこのグループについてくれてる。
だからこそ…わかっているからこそ、背中を向けたんだ。
メンバーはそれぞれ、タクシーの前で突っ立ってこっちを見てる。
俺の味方は、いない
誰も、いない
わかっているのに
心臓が冷たい
ガクガク震えるのを止められない。
そんな俺の腕を掴んでいた翔は、強引にタクシーに乗り込んだ。
「…待ってっ…」
「運転手さん、赤坂の方、向けてください…」
「あの…いいんですか?」
「いいんです。気にしないで。ちょっと酔っ払ってるから、この人」
にこやかに運転手に作りものの笑顔を向けると、運転手は戸惑いながらもドアを閉めた。
バタンという音が、地獄へ審判のガベルの音に聞こえた。