第3章 アガット
恐る恐る、いつもの自分の席に座って。
タブレットと書類をいくつか広げて。
ちらっと翔くんを見てみたけど、スマホを見たままで動かない。
今朝の様子からすると、不機嫌ではあったけども、怒ってるわけじゃなさそう…
翔くん、本気で怒ると口きいてくれなくなるから…
思わず、観察するように翔くんを眺めた。
今日はスタジオ撮りだったのか、ちゃんと髪型びしっとしてるし髭もきちんと剃ってる。
着てるジャージはいつもの、だらんとしたものだけれども。
(ニノよりはマシ)
色白の横顔に、いつもどおりの赤い唇。
くりっとした目は、女子以上に女子ってる可愛らしい目で。
どんぐりみたいな…いや、アーモンドみたいな綺麗な形をしてて。
スマホを持ってる手は、ちゃんと男らしい広い手で。
「…なあ、潤…」
俺…
翔くんを本当に、抱いたのかなあ…?
「…潤?」
だって、こんなにも男だぞ…?
「オイ!潤!」
「った、ぅあっ…」
突然でっかい声で呼ばれて、びくうっとしてしまった。
会議用のテーブルに膝をぶつけて、大きくテーブルが動いてしまった。
「ぐごぁ…」
膝…お皿…縁…ぶつけた…
「なにやってんだ、おまえ?」