第2章 ローズ・マダー
そんな彼の姿を見るのは、久しぶりだったかも知れない。
「智くん。それ、本気で言ってるの?」
立ち上がった瞬間、テーブルいっぱいに乗っている料理の皿やグラスが派手な音を立てた。
その隣りにいた相葉ちゃんが慌ててテーブルを押さえる。
「翔ちゃんっ…落ち着いて!」
「落ち着いてるよ」
そう言うけど、目が血走って…
とても冷静とは思えない。
「辞める…?抜ける…?解散?何考えてんの…これからどんだけ仕事詰まってると思ってんの?」
「だから…2020年までは、頑張る」
「は…?」
「今現在、決まってる仕事はきちんとこなしてから、引退する」
決意を込めた目で見つめるけど、むしろそれは火に油を注ぐ行為だった。
目に殺気が見えた
「落ち着いて。翔くん」
右隣に座ってる松潤が、俺の腕を掴んでる手を掴んだ。
「座って。騒ぎになる」
「そうだよ…翔ちゃん、座って?ね?」
俺の腕を掴んでいた手を離すと、翔くんは松潤を睨んだ。
「おまえ…知ってたのかよ?」
「いいや。今日、初めて…っていうか、前からこの人、そう言ってたじゃん?」
「…違うだろ…そうじゃないだろ…」
ぐしゃりと髪を掻きむしって、翔くんは椅子に座った。