第2章 ローズ・マダー
なにが…本当で…
なにが…嘘で…
なにが…虚構で…
なにが…現実か
絵の中の女は、ただ
楽園だった廃墟を見下ろしてる
その背景の黒
渦巻くように女を見つめている黒
誰かの顔が浮かび上がる
「…潤…」
それとも
「…翔…?」
いいや…僕…?
「さあ…選びなよ…」
翔は僕の目を真っ直ぐに見つめたまま、笑う。
「ここで俺に絞め殺されるか…それとも…」
翔がベランダの方を見た。
「ここから飛び降りるか」
僕の首を掴んでる翔の手は、冷たい。
相変わらず…冷たい。
いつも、冷たかった。
僕に触れるときの、翔の手…
「俺のもとから、離れていくからだよ…智…」
甘ったるい声を出すと、僕にキスをした。
「俺のこと、一人にするからだよ…智…」
嘘つき…潤が、居たくせに…
他にもたくさん…女が居たくせに…
「愛してる…こんなに、愛してるのに…」
翔の手に力が入った。
「や…だ…離して…」
「智は、俺のものだよ…?一生…」
「やめて…やめてぇ…」
翔の目が、大きく見開かれたと思うと、僕の首を締める手にもっと力が入って。
「…ぐ…ぅ…」
空気が、喉から出ていく
視界が、真っ白になって
翔が消える
「一生…逃さないよ…智…」
やめて…僕は…
僕は、もう…
飛び立つんだから