第2章 ローズ・マダー
「言葉少なに語って…人を、誘導するんだよね…あなた」
「なに…?」
そんなつもりはない。
言うべき言葉が出てこないから…
どう伝えるべきかわからなくなるから…
ボソボソと喋ってるうちに、誰かが先回りしてくれることはあるけど…
「いつも誰かが先回りしてくれるでしょ?」
心臓が掴まれたみたいな息苦しさに襲われた。
まさに今考えてたことで…
「今回の件だって…潤を使ってさ…」
「使ってなんか…」
「じゃあなんで?なんで潤があなたの気持ち代弁してるわけ?説明してるわけ?」
「それは…」
潤が僕の気持ちを理解してくれて…僕が思ってることを先回りしてくれるから…
「どうしてあなたの代わりに潤が戦ってるの?ねえ…智くん?」
「だから、僕にはそんなつもりない…」
「つもりがなくても」
翔の強い言葉に、僕の言葉は遮られた。
「結果的にそうなってるでしょ…ニノや雅紀は、あなたじゃなくて、潤と対立してる…」
カンバスを見たままだった目が、僕を見た。
冷たい…視線。
「…嬉しい…?」
「え……?」
「潤が、自分の思う通り動いてて、嬉しい…?」
「だから、僕はそんなこと…」
すっと、翔の目が細められた。
「嬉しいでしょ?計画通り、潤が自分に夢中になって」