第2章 ローズ・マダー
「どう…したら…」
ガタガタ震えだした身体を、抑え込むように。
翔は真っ青な顔で、両手で体を抱えた。
「どうしたら…許してくれる…?」
「許す…?言ったよね?なんとも思ってないって」
「でも…」
「もう、どうでもいい。だから…帰って?」
帰って
ひとりで
「智……」
怯えから、縋るような目になるまで時間は掛からなかった。
「お願いだ…償いを…」
震えながら、立ってる僕の足に手を伸ばした。
「そんなに…智を…苦しめて…」
ぎゅっと左の足首を掴まれた。
「壊してしまったんだな…俺…」
翔の身体の震えが、手から伝わってくる。
僕を見上げる目に、また涙が溢れてくる。
「壊す…?」
まだ、わかってないなあ…
「違うよ…翔…」
壊したんじゃない
「殺したんだ」
あなたが、潤を差し向けた時点で
僕は死んだ
「潤と翔に、僕は殺されたんだよ?」
一番…優しい笑顔で殺してあげる
「だから、おまえも死ね」
そう…死ぬんだよ、翔
「死…ぬ…」
呆然としてる翔を放っておいて、ベランダへ出る窓を開けた。
レースカーテンが、風で揺らめいた。
「おいで、翔…」
僕が声を掛けると、虚ろな目がこちらを見上げた。