• テキストサイズ

カラフルCU【気象系BL小説】

第2章 ローズ・マダー


「前は…アクリルじゃなかったっけ…?」

翔の方からも、プルタブを開ける音が聞こえて。
ゴクゴクと飲んでる音まで聞こえるほど、部屋の中は静かだった。

「…よく覚えてるね」
「そりゃ…」
「奈良さんに色々教わったから…だから油絵のほうが最近は多いよ」
「…そっか…」

部屋の隅のカンバスを僕も眺めた。
全然…今まで描いたこともないような絵。

赤紫色の服を着た、女の人の絵
その背後は…黒く塗りつぶした
その女の人が見下ろしているのは…楽園だった神殿の廃墟

「…どんな意味があるの…?」
「え?」

思わず、翔を見てしまった。
翔はカンバスをじっと見つめてる。

「あの絵…」

またぐびりとビールを飲んだ。

「智くんにとって、あの絵はどんな意味が…?」

翔の視線がこちらに向きそうだったから、目を逸らした。

「さあ…自分でも、よくわからない…」

最初から、なにを描こうかなんて決めて描いたことはない。
仕事なんかで頼まれて描くことはあるけども、大抵満足の行くものにはならないし。

ただ、ペン先から生まれる線を眺めていたら…なにかになっていたってことが多いだけで。

この絵も…

油絵の具をつけた筆先が動くまま描いただけで…
こんな絵になってしまった。

/ 327ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp