第2章 ローズ・マダー
ある収録終わり。
翔が僕に近づいてきた。
もうすぐ、ツアーも始まろうという冬…
僕たちの話し合いは、膠着していた。
僕が居ないのなら解散、そして結婚するというニノと。
それに味方するような形になってしまってる、相葉ちゃん。
本音は…解散も僕が抜けるのも嫌だって言ってたけど…
潤は僕の気持ちを代弁してくれながらも、ツアーのことで手一杯で。
来年の20周年アニバツアーのことも含めてだから、本当に暇がなかった。
翔は…あくまで中立を貫いていた。
そしてみんなの話を、根気強く聞いてる。
みんなの意思をまとめて、道を見出すつもりだろう。
僕は…引退するという気持ちを、変えられなかった。
むしろ、どんどん気持ちがそちらに傾いていって。
仕事にも身が入らない。
釣りに行っている時だけが、解放される時間で。
「この後…時間、あるよね?」
遠慮がちだけれども、拒絶は許さない声色。
翔の顔を見ると、腕時計を見てる。
「ちょっと、2人で話そう」
潤はこの後、ツアーの打ち合わせに戻っていく。
ニノと相葉ちゃんはすでに帰っていた。
僕は、隣に座る潤の顔をちらりと見た。
目が合うと、潤の表情は強張っていた。
それを眺めながら、船の上に居るように…
心が凪いでいくのを感じた。
もう、ここが潮時…
「…いいよ」
そう潤の顔を見ながら、答えた。
その目が見開かれるのに、微笑みかけて。
そして翔を見上げた。
「僕の家、行こうか…」
今度は僕が…ガベルを振り下ろすんだ