第6章 シュガー・ビート
「ちょっと待ってて…」
そしてその月のライトの置いてある棚の引き出しを開けてごそごそとなにか探してる。
「あった」
振り返った智くんの手には、コンドーさん1つ。
「ん!」
俺に向かってそのパッケージを突き出して見せてきた。
「えっ…へっ…!?」
「い…一個しかなかったから、それ大事に使って!」
「は、はいっ…」
慌ててそれを受け取ると、部屋がシーンとした。
えっと…
この後、どうすればいいんだろう
なんて、童貞みたいなこと思ってしまったのは…
目を逸して、壁の方を向いている智くんが急に黙り込んでしまったからで…
「うれし…かった…」
「え…?」
「さっき、嬉しかった…」
ボソボソと小さな声で、智くんが呟いた。
「なにが…?」
「俺の、体…気にかけてくれて…」
「…当たり前だろ…」
Tシャツを着てる肩が、少し動いて。
智くんが俺のこと、やっと見てくれた。
目が少し潤んでて、頬も赤くなってる。
目が合うと、笑った。
「ビビってる…?」
「えっ…と…」
見透かされてるって思ったら、ますますどうしていいかわからなくなった。
その時、智くんが俺の手からゴムのパッケージとボトルを取り上げた。
それをベッドの上に放り出すと、また俺を見上げて少し笑った。
「……変態の天才、だろ…?」
「智くん…」
真顔に戻ると、智くんはそっと目を閉じた。