第6章 シュガー・ビート
智くんが俺の手を握った。
「こっち、来て…?」
「う、うん…」
リビングを出て、来たときに入った洗面所に連れて行かれた。
几帳面にバスローブやバスタオルを用意してくれた。
「お風呂…その、シャンプーとか合えばいいけど…」
「あ、ああ…うん…多分、大丈夫…」
「じゃあ、俺、行くね…?」
きゅっと口を引き結んだかと思ったら、まっすぐに俺の目を見た。
「待ってるから…」
「…うん…」
もう、覚悟決めたんだ。
智くんに二言はない。
一回決めたら、絶対に守り通すんだ。
「待ってて…」
俺も真っ直ぐに目を見つめ返した。
ほんのり頬を赤くした智くんは、こくんと頷いて洗面所を出ていった。
慌てて服を脱ぎ散らかして、浴室に飛び込んだ。
使い慣れないお風呂だけど、智くんらしく使いやすく整ってる。
お湯を出して湯を頭から被った。
「ふううう…」
真っ直ぐな目…
智くんのほうが先に覚悟決めちゃって…
そう、いつでもそうなんだ。
先に決めるのは、覚悟決めるのは、智くんなんだ。
「俺も…決めなきゃ…」
智くんが決めたように。
俺たちが決めたように。
俺たちのこれからのために。
俺と智くんのこれからのために。
「絶対…離したくない…」