第6章 シュガー・ビート
しばらく待ってたら、コーヒーのいい匂いが漂ってきて。
ハンドドリップってやつで淹れてるんだろうか。
「おまたせー」
そう言いながらおしゃれなカップ&ソーサーを俺の前においた。
「ごめんね、待たせて。ケーキ食う?」
「いいよ。あれは智くんが食べて?」
「…俺を太らせてどうするつもり…?」
「…かまどに押し込んで、焼いて食っちゃおうかな…?」
「げ。何いってんのさ…」
「ヘンゼルとグレーテルだよ。覚えてない?」
最近紙芝居やってるもんだから、童話ばっかり読んでて。
「あれ、そんな話だっけ?」
「そう。魔女がかまどで焼かれるんだよ」
「うえー…」
智くんが苦笑いしながら、マグカップでコーヒーを啜った。
「…やっぱちょっと太った?」
「うっさいわ…自分が痩せたからって…」
ブツブツ言うおっさんは、一昨日とてもあんなとこであんな大胆なことをしていた人には見えなかった。
いや…でも…
話に聞くだけで、相当凄いところで致してるんだけどね。
俺だって人のこと言えないんだけどね?
わかってるんだよ、変態だって…
「あ…」
「ん?」
「いや、なんでもない…」
そっか…変態だからいいのか。
智くんの顔を見て勃起したって。