第6章 シュガー・ビート
邪魔くさい廊下の映像が終わると、画面が急に大きくブレた。
そして、スイートの室内が映し出された。
ごくり、また、あの時を思い出してつばを飲み込んだ。
音声は俺の立てる物音の方を拾っていて、智くんの吐息までは聞こえない。
でも、思ったよりも明かりのついていない室内ははっきりと写っていて。
ひとりで耽る智くんの姿が、シルエット状に映し出された。
パッと見て、これが大野智かと言われたら、わからないだろう。判断に迷うだろう。
でも彼をよく知る人が見たら、わかる。
そんな程度の動画だったけど、俺はまたあの卑猥な時間を思い出して背中に汗を感じた。
「や…べ…」
すぐにカメラは床を映し。
俺のかすかな荒い息の音が聞こえる静止画みたいになった。
「ちっ…」
すぐにパソコンを起動し、動画を落とし込んだ。
動画編集ソフトで、邪魔な部分をカットした。
それはもう短い動画になってしまったが、繰り返し繰り返し。
俺はひとりで耽る大野智のシルエットの動画を眺めた。
なにやってんだろって、思うんだよ?
おかしいだろ、変態すぎるだろってわかってんだよ?
だけど…なぜだか、脳裏に刻まれたあの卑猥な姿を、更にはっきりと記憶するように。
俺は何度も何度もその動画を繰り返し再生した。