第6章 シュガー・ビート
その後、頭に血が登ってしまったのか、朦朧としながら楽屋に帰ってきて。
なんとか心と身体を鎮めるのに精一杯で。
セットの直しが終わって、衣装に着替えてヘアメイクして。
収録の終わったVにいさんや、キンプリがバラバラにうちの楽屋に挨拶に来て帰っていく。
そして更に本番の間中。
さっきの映像を頭から追い出すのに苦労した。
御大は…智くんは…飄々と黙々と仕事をこなし、さっきのことなんてなかったかのように、いつも通り。
多分、俺に見られてたなんて気づいてない。
まあ、俺に見られてたとしても…
智くんなら、一向に気にしなさそうだけど。
ちょっと油断すると、さっきの果てた瞬間の顔を思い出しそうで、いつもよりはしゃぎすぎてしまったかもしれない。
本番が終わって、技術スタッフさんたちに挨拶して。
クールダウンしてから、横アリの風呂に久々に入って。
家に戻ったら、玄関にへたり込むほど疲れていた。
「なん…なんだよぉ…あれ…」
あんな顔、見たことない。
25年近く前から彼を知ってる。
だけどあんな顔…
「はぁ…ああ…もう…」
思考が乱れてしまって、三和土の上で座り込んだ俺は頭を掻きむしった。
セックスのとき
あんな顔するのかな
「う…わぁっ…」
何を考えているんだ俺!
ばかじゃねーの!
メンバーのそんなこと考えるなんて!
「わああああ!!!」
慌てて立ち上がって、靴を脱いで家に上がり。
そのまま風呂場に直行した。