第6章 シュガー・ビート
少し身体がこちらを向いてて、また心臓が跳ね返った。
見つかったのかと思ったけど、そうじゃなく…
その横顔をじっとみてたら、だんだん目が慣れてきて。
表情が見えた。
目を閉じて。
入ってる。
うっとりと、少し顔を上げて。
半身をガラス窓に凭れさせてる。
ごくりとまたつばを飲み込んでしまった。
その音すら、聞こえるんじゃないかとヒヤヒヤしてしまう。
頬が紅潮して…
そしてその右手は、智くん自身を握りしめて忙しなく動いてる。
うわ…本当にやってる…
わかってるんだ
わかってるからこそ
こんなに息を詰めて
必死に気配を消してるんだ
でも、本当にその行為をしている姿を見て
脳が殴られたような衝撃を受けて目が離せない
時々、ピクリと身体を震わせる
半開きになってる口から小さな吐息が聞こえる
なぜだか、少しでも脳みそに記憶させるように
食い入るようにその情景を見た
時々ちらりとガラス窓の向こうの遠くに視線を移し
うっとりとまた顔を上げて目を閉じる
密やかな自分だけの快感を、身体めいっぱいで感じてる
暑くもないのに、全身から汗が吹き出した。
呼吸を詰めているから、苦しい。
心臓がバクバクして止まらない。
鼓膜に心臓が付いてるみたいにうるさい。
やがて少し背中を反らせるように天井を仰ぎ
目を閉じたまま、ぶるりと身体を震わせた
「あ…ぁ…」
聞いたこともない
甘い…甘い
快感の声
その瞬間
天井を仰いでいた顔が、少しこちらに傾いた
少し目を開いて
だらしなく開いた口
紅潮した頬
怠惰で壮絶な色気を纏って
智くんは果てた