第6章 シュガー・ビート
智くんが居なかったら、後でこんなとこで致しましたって自慢しようと思って…
いつもはこんな浮かれたことはしないんだけど、いい場所を見つけてしまったからか、なんだか興奮してた。
にやけながら薄暗い中、スマホで動画を撮りながら進んだ。
8室ある個室のちょうど、真ん中。
スイートの部屋の前で異変を感じた。
人の気配が、する
どくんと、心臓が大きく鳴った。
慎重に気配を消して、ドアに耳をつける。
なんにも聞こえない。
でもさっき確かに、なにか物音が聞こえた気がする。
ゴクリ、つばを飲み込んだ。
心臓がバクバク音を立てる。
まさか…居る…?智くん…
じっとりと、背中に汗をかいた。
スマホを持っている手にも汗が滲んでくる。
これも出歯亀になるんだろうか。
バクバクする心臓を鎮めるため、必死で考えた。
人生でAV見る以外、人のセックスなんて覗き見したことなんかないし。
いや、これでもセックスじゃないしなあ…
ひとりえっちだし。
引き返せばいい。
でも…
智くんって、普段どんな風にひとりで致してるんだろうか
好奇心がどうしても引っ込んでいかない。
手が、震えてきた。
ドアノブに手を掛けると、そっと力を込めてドアを開けた。