第6章 シュガー・ビート
「あれえ…?おっかしいな…」
怪しそうな場所はつぶさに見て回ったけど、御大の姿は見えなかった。
「まさか…」
いや、でも…
智くんなら、やるかも。
そう思って、ステージへと足を進めた。
流石にアリーナ会場の中は、少ないとは言えスタッフさんがたくさんいて。
近くなればなるほど、人の気配がする。
スタッフさんに挨拶しながらステージ裏に到達。
ちらちらと探してみたけど、あたりは建て込み中で電気がガンガンついてて明るい。
「ここじゃ無理だな…」
ステージ横から客席側に降りてみた。
ここもスタッフさんが居て、やっぱり落ち着かない場所ではある。
「うーん…」
本番中は明かりが落ちていて適度に暗いのだが、今は作業中だからアリーナの客席は明るい。
ぐるっとアリーナの上の方まで見渡してみた。
でも、智くんの姿は見えない。
「いやあ…どんなマニアックなとこ見つけたんだ…?」
なんだか悔しくなってきて。
ぜってー現場を見つけてやるって感じになってきた。
腕時計を見ると、まだ休憩が終わるまでは時間があった。
「よっしゃ…」
1階の客席からエントランスに出るドアを開けて、外に出た。
外の明るい光が入ってきて、思わず目を細めた。