第6章 シュガー・ビート
「翔ちゃんは、最近どう…?」
コーヒーを俺に勧めると、智くんはパイプ椅子の背もたれに寄りかかった。
そうか、それが聞きたかったのね。
「うーん…」
ずずずとコーヒーを啜ると、温かい。
さっきまで根を詰めて打ち合わせしていたから、染み入る。
「湾岸スタジオの楽屋…」
「えっ…」
御大が絶句したので、大変満足した。
「がっ…楽屋だって!?ガッデム!」
「ちょ、智くん声大きい…」
「ご、ごめん…」
きょろとあたりを見渡す。
潤が、怪訝な顔をしてこっちを見ている以外は、変化はなかった。
ずずっとパイプ椅子を引きずると、智くんは俺に近づいてきた。
そして顔を近づけてきた。
「…いつさ?VSの収録のときでしょ?もしかしてスペシャルのとき?」
「ふふふ…やっぱ、智くんもわかってなかったんだ?」
「いやあ…わかんない。わかんなかったよ…すげえ…楽屋って…いやあ…そうか、楽屋か。すげえええ…」
またちらっと潤の方をみて、こっちを気にしていないのを確認して、更に顔を近づけてきた。
「…楽屋で一人になる瞬間なんてあったの…?」
「それがさ、あれだけ長時間の収録だったろ…?奇跡的にあったんだよ…」