第2章 ローズ・マダー
その右手に…そっと、松潤の唇が触れた。
「…自由になりたいってさ…」
「え…?」
唇の熱さで、うまく思考ができない。
「これからも、生きていたいってことだよね」
強い目で射すくめるように見つめてくる。
目を、逸らせなかった。
だんだん、その目は近づいてきて。
息がかかるくらい近くに来ても、目が離せない。
「死にたくないから…だよね…?」
「まつ、じゅ…」
名前を最後まで呼ぶ前に、唇が重なった。
軽く触れるだけで離れていった唇の熱…
今まで感じたこともない、奥底に眠る何かが動く。
「俺に、しない…?」
「え…?」
「俺なら、あなたにもうしんどい思い、させないよ?」
「…なに…?」
何を言っているのか、わからなかった。
一瞬頭の中に暴風が吹き荒れるような感覚があって。
それから、ストンと理解した。
目の前にいる松潤が、知らない人に見えた。
握っていた右手を引き寄せられた。
床に座る僕は、バランスを崩して。
その身体を受け止めるように、松潤に抱きしめられた。
「…見てたらわかるって…言っただろ」
「え…?」
「もう、別れたんだろ?翔くんと」
返事ができなかった。
「好きだ…」
甘い…
甘い響きが、体の奥底の何かを
動かした