第2章 ローズ・マダー
「…それほど、追い詰められてるの…?」
追い詰められる…?
いいや…そうじゃない
そうじゃ…
「…もう、わからないんだよ…」
「え…?」
「何が苦しいのか、なにが怖いのか」
「怖い…?」
「なんで生きてるのかなんのために息をしているのか」
「ちょっと…」
だんだん早口になっていくのを止められない。
「自由になりたい」
声が、強くなってしまった。
松潤の息を呑む音が聞こえたかと思ったら、部屋はしんと静まり返った。
「…大野さん…」
「ただ…それだけ…」
頭がぼーっとしてきて…
もう、眠りたかった。
さっき、コーヒーを飲んだばかりだというのに。
今日は、一日オフだったというのに。
「……翔くんの、ことじゃないの?」
心臓が、跳ね返るかと思った。
一気に眠気が吹っ飛んで、体温が上がった気がした。
今まで一度も…僕と翔の関係には、メンバーは何も言ってこなかった。
改めて報告するようなことでもない。
しかも同性同士。
理解なんて期待はしてない。
でも、ずっと一緒にいるから、隠し通すことはできなくて。
みんな、知ってる状態ではあった。
「…見てれば、わかる…」
掴んだ腕を辿って、右手を大きな手が包んだ。
あたたかい…
松潤の手