第5章 ブーゲンビリア-Fseries-
「翔ちゃん…」
「ん…?」
「起きて。時間だよ」
「ああ…うん…」
宵っ張りな俺に比べて、智くんは夜はさっさと寝てしまうから朝が早い。
いつもこうやって俺のこと、起こしてくれる。
昨日は俺の仕事の上がりが、深夜だったから。
どうやらゆっくりと寝かせてくれたらしい。
時計を見たら、結構な時間になってた。
「…夢、見てた…」
「へえ…何の夢?」
カーテン越しに差し込んでくる陽の光の中、俺の旦那さんがベッド際に腰掛けて笑いかけてくれる。
「初めて…テレ朝のスタジオで…智くんと会ったときのこと…」
「…なに恥ずかしいこと思い出してんのさ」
「全然…恥ずかしくなんかないよ…懐かしい…」
「…ほら、早く起きて。ご飯できてるよ」
「うん。ありがと」
パジャマのままリビングに出ると、ベビーベッドの中から、蓮(れん)くんが座ってこっちを見てた。
智くんは朝からどうやら、蓮くんと遊んでてくれたようだ。
すっかり目が覚めて元気みたい。
「おはよ~蓮くん…もう、ご飯食べたの?」
「んまー!」
「そっか。今日はお父さんがご飯食べさせてくれたからごきげんだね?」
「んまっんまっ!」
「今日もねえ、お母さん仕事だから。お父さんと一緒に待っててね?」
「んまーーーーっ!」
どっかのおばはんみたいな声を上げながら、蓮くんはベッドの上に転がった。
何が楽しいんだろうか…
「…朝からテンションたかっ…」
「翔ちゃん、早く食べちゃいな?」
「あ、はーい」