第5章 ブーゲンビリア-Fseries-
「でもさ…智くん…」
「ん?」
「俺もう、大丈夫になった」
「え?」
だって、俺には智くんがいる。
運命の相手…俺だけの、智くん…
「なんで薬飲んでるのにさ。智くんが俺の匂いわかったか…わかる?」
「うん?いや…よく、わかんない…」
「それはね、俺と智くんはDNAレベルで決まってた、結ばれる運命の相手だからだよ」
「えっ…運命!?」
「そう…俺、そんなの伝説だって思ってたけど…でも本当にあるんだね…」
「伝説…?」
「そう。運命の番っていうんだって。同性のアルファとオメガが、たまに結婚するじゃん?あれってそういうことみたいだよ?」
「ほえ…」
「抑制剤も効かないほどの、運命の相手なんだって」
「あ、だから俺…その…」
智くんは真っ赤になって前を向いた。
「ふふふ…そうなんじゃないかな?」
「で、でも…俺と翔ちゃん出会ったの20年以上前じゃないか…なんで今なの…?」
「ふふ…」
高速の入口に車を入れる。
ETCの合図の音が聞こえて高速道に入ると、俺は智くんを見た。
「検診の時、お医者さんに聞いたんだけどさ…」
「うん…?」
真剣な顔で俺を見つめ返す。
「俺の体が、赤ちゃんを産む、準備ができたよってことなんだって」