第5章 ブーゲンビリア-Fseries-
「話し、なんだった?」
運転席に乗り込むと、智くんが心配そうに話しかけてきた。
「泣いてた…よね?お義母さん…」
「嬉しかったんだって…」
「そっかあ…喜んでくれてるんだ…」
エンジンを掛けて、車を出すとカーオーディオから嵐の曲が聞こえてきた。
”きっと大丈夫”
そう…きっと、大丈夫…
「俺がオメガで生まれたからね…苦労、いっぱい掛けたって思ってたんだけどね」
「え?」
智くんがキョトンと俺を見た。
「…でも、そうじゃないって…言ってた…」
「うん…?」
智くんはわけがわかんないって顔してる。
それがなんだか、面白かった。
「俺がオメガだからとかそういうのは、関係なく…さ、息子として愛してるよってさ」
「うん…翔ちゃん…?」
「うん?」
「今まで、わかってなかったの?」
「…わかってなかった…わけないんだけど…ほら、やっぱどうしても、ね…」
学生時代に成績落とさないよう意地になって頑張ったのも…芸能界で必死にもがいたのも…
それはやっぱり自分がオメガだって意識がつきまとっていたからで。
自分が自分のこと認めてなかったんだ
自分が一番怖がってる、誰かに否定されるってことを
…自分にしてたんだ…
本当は、自分が一番…
自分のこと認めなきゃいけなかったのに…