第5章 ブーゲンビリア-Fseries-
「うん…」
母さん…ごめん…
「ごめんね…母さん…」
今まで、俺がオメガで…どんだけ心配してきたか…
「違うのよ…翔…」
ぐずっと鼻を啜ると、真っ赤になった目で俺を見上げた。
「あなたが…傷つくのを、もう見たくないの…」
「母さん…」
「最初にヒートが来たとき…薬を渡しておかなかった、私のせいよ。だからあなたは何も…」
「母さんそれはっ…」
「大野くんには、言ってないんでしょ…?」
「…言ってない…」
「ごめんね…翔…」
「なんで…謝るんだよ…」
「今も言えないってことは、あなたにとって、大きな傷になってるってことだと思う」
また目にハンカチを当てた。
「その原因を作ってしまったこと、本当に申し訳なかったと思ってる。でも、翔…」
「…なに…」
「私はあなたがオメガだろうがなんだろうが、愛してるよ」
「…母さん…」
「それは、お父さんも一緒だからね…」
「うん…」
「ちょっと厳しくしすぎたかなって思うこともあったの…」
「わかってる…」
「でも、部屋の掃除はちゃんとしてね…?」
「う……」
「大野くんにばっかりさせるんじゃないわよ?」
「う、うう…」
唸ってる俺を見て、母さんはニヤリと笑った。
ぺちっと俺の腕を叩くと、そのまま戻っていった。
「な…なんだよ…最後まで浸らせろよな…」