第5章 ブーゲンビリア-Fseries-
「そうですよ。櫻井さん」
智くんの後ろから声が聞こえてきて…
その声の主は、智くんのお父さんだった。
「私達には、翔くんがオメガだということは些細なことです」
智くんとそっくりな顔を俺に向けて、そしてちょっと照れたように笑ってくれた。
それから、櫻井と大野の親の挨拶合戦になって。
いつまでも親たちはペコペコと頭を下げ合ってて、俺と智くんはちょっと呆然としてしまった。
「さあどうぞ。こんなところで立ち話してたら、翔くんの体が冷えるから…」
智くんのお母さんがお父さんの後ろから出てきて、皆を中に入れてくれた。
客間に通されると、智くんのお父さんが、俺の座布団を追加でもう一枚持ってきてくれて。
…覚悟、してたつもりだったのに…
こんなに暖かく迎えられて。
泣きそうになった。
智くんのお母さんが、お茶を出してくれて。
それから俺と智くんはちゃんと挨拶と報告をして。
「…ということで…俺たち、結婚するから」
智くんはさらっとご両親に言うと、俺の両親へ頭を下げた。
「籍については、子供が生まれるまでにきちんとしますので」
「ああ…それは二人に任せるから…」
父さんは頷いて満足げに笑った。
母さんは安心したのか目にハンカチ当ててるし…