第5章 ブーゲンビリア-Fseries-
次のふたり一緒の休みの日で、そして週末。
三鷹の大野家に挨拶に行った。
本当だったら、一回智くんもうちの実家に挨拶に来て。
それから俺が大野家に挨拶に来てから、両家顔合わせって段取りをしたかったんだけど…
もう俺の仕事の状況が、出産の都合でめちゃくちゃ詰まってたし。うちの親も忙しいし。智くんとこの親御さんも忙しいし。智くんも俺の仕事のカバーに入ってるから超忙しいし。
結局、結婚と妊娠の報告と、両家顔合わせが同じ日になってしまった。
…相当、覚悟はした。
俺たちの年代ではもう、差別はない。
でも、やっぱり親世代の人たちには…
オメガ
それがどんな意味を持つのか、俺には十分すぎるほどわかってる。
うちの親も、そこはすごく心配してた。
オメガは劣った遺伝子を持つ人間。
アルファ統率者になる優秀な遺伝子を持つ人間。
オメガはヒートの期間、社会活動を営むことが困難になる。
それに優秀なアルファの性犯罪を増やしてしまう。
だから、特効薬ができるまでオメガの社会的差別は、全世界的に苛烈だった。
そんなのもう、40年以上昔の話で…
俺達の世代にはもうそんなこと言う人もいなくはなっているんだけど。
でもやっぱり、親世代は忘れてはいない。
だからすごく不安で…
うちの親も、本当にいいのか何度も聞いてきたし。
だけど、智くんだけは…大丈夫だよって。
ずっとそう言って笑ってて、全然真剣に取り合ってくれなかった。
俺の両親も合流して、4人で大野家の前に集合した。
「智くん、ごめんね?押しかける形になっちゃって…」
「いやいや…いいよ。だって翔ちゃんのご両親も忙しいんだし、しょうがないよ。まとめての挨拶になったってさ」
ふふっと笑って、俺を見る。
でれっとしそうだったから、思わず眉間にシワを寄せて、めってしたら、智くんは真顔になった。
ペチペチと自分の頬を両手で叩いてから、俺の親に向き直った。
フンッと鼻から息を吐き出すと、ぺこりと頭を下げた。
「本当は俺の方からお家にご挨拶に行かなきゃいけなかったのに、すいません。まとめてこういう形になって」