第5章 ブーゲンビリア-Fseries-
むすっとしたまま、智くんは立ち上がった。
それから俺に手を差し出した。
「…鈍くならないよう、頑張るから」
「うん?」
「だから…一生、一緒に居てくれる?」
「…そんなの…あたりまえじゃん…」
差し出された手を握って、俺も立ち上がった。
「よっこいしょういち」
「ぶっ…おっさんくさっ」
「…お腹張るんだもん…しょうがないでしょ」
「あっ…そ、そっか。ごめんね?そうだよね…」
慌てて俺のお腹に手を当てて、擦ってくれる。
「中の人、ごめんねー…?苦しかった?」
「もー、お父さん酷いねえ?中の人…」
「お、お父さん…おお…俺、お父さん!」
智くんの手の上から、自分の手を重ねた。
「ふふ…お父さん」
「はーい!」
「いい返事だねぇ」
にひゃっと智くんはデレ笑いした。
「ちゃんとこれから妊娠の勉強するね?」
「それはよかった。メバルの勉強ばっかしてるから、勉強する気ないのかと思ってた」
「うっ…」
「婚姻届出したら、プレパパ教室も行こうね」
「行っていいの!?」
「プライベートでやってくれるとこ、探してあるから」
「さっすが翔ちゃん!スケジュール無理でも行く!」
「いや、仕事はしろよ」
って突っ込んだけど、智くんは浮かれて聞いてくれない。
「プレパパ教室かあ…妊娠スーツ着てみたかったんだよね…」
「奇特な人だね…智くん…」