第5章 ブーゲンビリア-Fseries-
残りを書き終えると、智くんが婚姻届を手に取った。
「わぁ…俺と翔ちゃんの婚姻届だぁ…」
「もお…保証人の欄書いてもらわないと、完成じゃないからね?」
「わかってるけど…やっとこれで、堂々と手繋げるねっ」
「え、へ?手、繋ぎたかったの?」
「…うん…」
もじもじと、照れてそっぽを向いてしまった。
ほっぺたが真っ赤だった。
付き合ってからというもの。
智くんは、びっくりするほどべたべたに愛情表現する。
愛情表現が淡白だって、自分では言ってたんだけどね。
俺は知ってる
それは多分、俺だけ
今まで智くんがどんな恋愛をしてきたか、詳しくは知らないけど。
俺が一番愛されてるって、俺は知ってる。
「…じゃあ、繋ごう?」
だって、智くんは俺だけの”雄”だから。
DNAレベルで決まってる、俺だけのものだから。
「翔ちゃん…」
びっくり顔の智くんに、手を差し出した。
きょろきょろと周りを見渡すと、智くんはまじまじと俺の手を見て。
それからゆっくりと、手を握ってくれた。
「…嫌じゃ…ない?」
なんて、聞いてくるからおかしくて。
「嫌なわけないよ?だって智くんは俺の旦那さんだもん」
「だっ…ダンナさん!!」
ぎゅうって、握ってくれた手に力が入った。
…嬉しいのが、手からじわりと伝わってくる。