第5章 ブーゲンビリア-Fseries-
少しだけ、翔ちゃんのお腹は丸みを帯びていた。
そのカーブに沿って手を動かすと、手のひらがあったかくて…
「うわぁぁぁ…うわぁぁぁぁ…すごぉぉぉい…」
俺、俺…おとうさんになるんだっ!!
「智くん…」
「翔ちゃん、ありがとうっ…俺をおとうさんにしてくれてっ」
「……いいの…?」
「へ?なにが?」
「産んで…いいの…?」
「えっ何言ってるの!?産まないの!?」
「え…?いいの…?」
「いいに決まってんじゃん!なんで!?」
「…だ…だって…俺…」
翔ちゃんは俺の顔を見たまま、盛大に涙をこぼし始めた。
「えっ…えっ…どうしたの!?翔ちゃん、嬉しくないの…?」
「だってっ…だってっ…」
「翔ちゃん…?」
凄い取り乱して、翔ちゃんは泣き続ける。
背中を擦りながら、落ち着くのを待ってみたけど、一向に涙は止まらなかった。
「泣かないで…?翔ちゃん…」
「…智くん…ごめん…黙っててごめん…」
「だから何が?」
「俺…オメガなんだ…ごめんっ…」
ガバっと翔ちゃんは頭を下げた。
膝にめり込むほど頭を下げた。
「…へ…?」
「今まで…何度も言おうと思ってたのに…怖くて言えなかった…ごめんっ…本当にごめんっ…」
「知ってたけど…?」
「え…?」