第5章 ブーゲンビリア-Fseries-
水を持ってきて言うけど、うんとは言わなかった。
「もおっ!なんか重い病気だったらどうすんだよ!?」
「…違うから…」
「えっ?原因わかってるの?」
ソファに座ってる翔ちゃんは俺を見上げた。
その目は、真っ赤になって潤んでて…
「えっ…?なんで泣いてるの…!?」
「智くん…俺…」
「どうしたの…?」
「できたかも…」
「え?」
「子供」
「え?」
「だから、赤ちゃん…」
「アカチャン…?」
アカチャンって…なんだ…?
「避妊…してなかったから…だと…思う…」
「ヒニン…?」
ヒニンって…なんだ…?
え…?
赤ちゃん…避妊…って…
「おあっ…!?えっ…!?マジで…!?」
いきなり、突然、漢字で言葉が理解できた瞬間、翔ちゃんの隣に座った。
「ほんと?!ほんと!?ほんとにほんと!?」
「…うん…」
お腹を両手で抱えるようにして、翔ちゃんは俯いてしまった。
「…ごめん…」
「えっ!?えっ!?なに謝ってるの!?えっ!?俺、お父さんになるの!?」
「…え…?」
翔ちゃんがびっくりした顔で、俺を見た。
「ちょ、ちょっと…お腹触らせて…?」
「う、うん…」
翔ちゃんが手をどけると、下っ腹に触らせてもらった。
「凄い…ここに、俺の子…いるんだ…」