第5章 ブーゲンビリア-Fseries-
「な、なんか飲む?」
「え…いや…うん…じゃあ、貰おうかな?」
「わかったっ!」
ちょっとでも翔ちゃんと距離を取ったほうがいい。
じゃないと飛びかかって無茶苦茶にしてしまいそうだ。
冷蔵庫から酒を出して。
はたとそこで考え込んだ。
「酒は…まずいだろう…」
理性ぶっ飛ぶ自信がある。
しょうがないから、眠くならないようにってことで、コーヒーを淹れることにした。
豆をミルで挽いて、ペーパーフィルターをドリッパーにセットして、サーバーの上に置く。
その間に沸かしていたお湯をちょっと冷ましておく。
「智くん…?」
気がついたら、キッチンの入口に翔ちゃんが立っていた。
「あっ…ご、ごめんね?待たせて。今、コーヒー淹れてるから…」
「あ、そうなんだ。わざわざごめんね?こんな夜中に押しかけて…その…」
もじもじと翔ちゃんは下を向いてしまった。
やばい。
なんか、新鮮すぎて。
やばい。
「…ちょっと話がしたかっただけなんだ…」
「う、うん…」
「顔、見たかったっていうか…」
「お、おお…」
「まさか、智くんから俺にあんなこと言ってくれるなんて、思ってもなかったから…嬉しくて…」