第5章 ブーゲンビリア-Fseries-
「悩みっていうかね…うん…なんつーの、にんげんのこんげんってやつ…?」
「は?人間の根源?」
「そう…人間ってなんだろうねってこと…」
「…オイ、マネくん!」
「は、はい?なんでしょう?」
「大野さん、熱あるみたいだから、病院連れてって!」
「えっ…ちが…」
「ええっ…大丈夫ですか!?大野さんっ…」
「だから、ちが…」
「今日もずっとトイレ行って下痢してたし、なんかおかしなこと言い出すし…早く病院連れてってよ」
「ち、ちが…」
その日、熱もなにもないのに、俺は救急に連れて行かれた。
マジ、散々…
やっと病院から開放されて。
家に帰ったのはなんと深夜だった。
「まじでもー…」
なんもないから、そりゃ検査してもなんもないわけで。
医者もなんか変な顔してるし、マネくんは新人だから焦っちゃってさぁ…
一応、熱があったかもしれないからって、解熱剤もらってきたけどさ。
「熱なんかねえっつーの…」
そりゃ、今日一日、ちんこは発熱中だったけどさ。
「あー…」
バタンとソファに倒れ込んで。
悶々と今日一日のことを思い出す。
翔ちゃん…本当にいいにおいだったんだよなあ…
なんか脳に来る…
もう翔ちゃんのことしか、考えられなくなるほど…
でもさ、それって…
翔ちゃんがオメガだから…?
そうだとしたら…
黙っている翔ちゃんには、絶対に言えないなと思った。
傷つけてしまうかもしれないから。