第2章 ローズ・マダー
吐瀉したものが身体に纏わりついてる。
それを翔は丁寧に流してくれた。
はじめて、見る表情で
「…そんなに、俺のこと嫌いになった…?」
大人の仮面が剥がれた、本当の翔の表情
子供みたい
泣くのを必死に我慢してる
「嫌いだから…離れるんだろ…?」
嫌い…?
嫌いとか好きとか…もう、よくわからない。
ただ…ここに居たら、駄目になる。
死んでしまう。
だから、飛び立ちたいだけ
「…もう殴らないから…もう…暴力は振るわないから…」
「…違う…」
「え…?」
「そんなことじゃない…そんなことじゃ…」
「……じゃあ。どういうこと?」
僕の…
僕だけのこの世界は、翔の色で染まってる
「確かに、翔の暴力はもう嫌だよ。暴力は…嫌だ…」
「智…」
「でも…そうされても、僕は翔のこと…嫌いになれなかった」
好きで…好きで好きで
やっと思いが通じた時、今死んでもいいと思ったくらい幸せで。
何度もあの日のこと思い出して、胸があったかくなるくらい幸せで。
翔が僕に暴力を振るうのだって、僕だから…
僕にしか、そんな姿見せられない…
弱い、人だから…
それは、僕が翔の愛する人だから
僕だけにそうするんだと…
そう、思ってた