第1章 1章
女の子は真っ赤になってポーッとしている。それを見た男の子は口元をほころばせると彼女の手をそっと握った。
そしてまた、黙ってバスを待つ。
女の子は握られた手を素直に預けたまま、恥ずかしそうに、うつむいている。男の子のほうは、何も言わないけど、二人の間に漂う甘い空気がこちらまで漂ってきそう。
うー、あんなの見たらこっちまで照れちゃう。でも・・・ちょっとうらやましいかも。私もあんなふうに…。脳内で配役を入れ替えて今のシーンを思い浮かべた。。まず私がマフラーをしてバスを待っていたら、そばに立っていた金森さんが…ってストップ!始まりかけた脳内妄想を中断させる。
私ってば何を想像してるの。すっごく恥ずかしいこと考えるところだった。みるみる頬が上気していくのがわかる。
「どうかしたんですか?」
「な、なんでもない!」
私の考え、気づかれてないよね?思わずうつむいて視線をそらしてしまう。金森さんはそれ以上詮索しては来ない。沈黙が降りる。その間もちらちらと隣の横顔を盗み見てしまう。彼女は恋人同士のこういうの見たら、どう思うのかな。うらやましいとかは思うわけない気がするけど。
その時、ふと視線を感じた。見ると、うん?