第1章 1章
ああ、ちょっとでも期待した私が馬鹿だった。この人がそんなことするわけないのに。
「どうかしたんですか?顔、真っ赤ですよ」
「ううん、別に!ほら、バスが来た」
ごまかしたくてちょうど来たバスに体を向けた。。
一人用の座席にたどり着くと脱力と恥ずかしさで崩れるようにへたり込んだ。私ってばどれだけ未練がましいの。金森さんは乗り込んで離れた座席に座るのを横目に、頭を抱えた。。
壁ドンの時も期待して馬鹿を見たけど、まさかの二度目の肩透かし。我ながら情けない。でも映像研と関わっていく限り、これからもこんな日が続くんだろうなあ。望みのない恋とわかっているのにこんなぬか喜びに現を抜かすなんて不毛も不毛。ああ、でも困ったことに当分はこの刹那的幸せから抜け出せそうにない。