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魔入間短編

第3章 風の悪戯(カルエゴ)



強い風が通りすぎて、

「……っう、」

左目に激痛。
反射的に涙が出た。
こんなときは目を擦るのは駄目だ。
けど、しぱしぱしても、目に入ったゴミは流れない。
その場所から動けずにいたら、

「どうした?」

声をかけられた。
声をかけてきたのは、

「カルエゴ先生。」
「何をしている?」

目にゴミが入ったことを説明した。


カルエゴside

「……見せてみろ。」
「は、はい。」

少し、身を屈めて、上に顔を向けるミユキの目を覗く。
涙で濡れて、……心をざわざわさせられる。
顔には一切出さないが。
覗いただけではゴミは確認できなかった。

「動くな……」

右手を顎に手を添えて角度を固定して、左手の親指で左目の下瞼を引っ張った。

ああ、ゴミは涙に含まれて流れたようだ。
それを伝えようとすれば、顔を紅く染めて、此方を見つめる視線に気づく。

「と、取れました?」
「……いや、まだだ。」

羞恥に振るえているのがわかった。
暫く見ていたいとも思ったが、長く引き留めるのも、色んな我慢が効かない気がした。

「…とれたぞ。」
「あ、ありがとうございます。」
「……あまり、無防備になりすぎるな。」
「?は、はい。肝に命じます。」

指の先に僅かに着いた涙を舐めた。

「…甘いな。」

意外に甘かった涙に驚いた。




後日、中庭でカルエゴ先生が、生徒とキスしてたとか噂が出回り、その火消しに躍起になった暗黒大帝が居たことをミユキは知らない。

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