第1章 あなたへ
「カルエゴ先生、バラム先生に何か言われたのですか?」
訪ねると、案の定らしい。
「……捕まえておかないと逃げられると言われた。」
どうやら、バラム先生に焚き付けられたようだ。
でも、私、バラム先生にカルエゴ先生が好きなこと教えたっけ?
いやいや、言ってないよ?
何でバレたんだろ?
「……あ、愛を囁いて下さるのですか?」
「……黙れ。」
えー?
顔が凶悪ですよ?
言ってることと、表情が合ってない。
ぎゅと抱き締められて、表情は見えなくなった。
「先生、」
「黙るんだ。」
喋るなと言われたけど。
ノープランですか?
先生の匂いが、チョコの匂いよりも魅惑的に感じられる。
先生の心臓、脈拍が早いですよ?
緊張してくれてるんですか?
私、幸せです。
先生の背中に手を回して、力を込める。
返事は、まだ聞けないけど、今は、このままでもいいかな。
答えをもらえないまま、時間は過ぎて、
けたたましいス魔ホの音で中断させられた。
「はい?」
『ミユキちゃん!?どうしたの!?どっかで具合悪くなっちゃった!?』
「あ、ごめんなさい。すぐ帰るから。」
『おじいちゃん、迎えに行くよ!?』
「大丈夫、待っててね?」
『はぁーい!待ってるよー』
ス魔ホを片付けると、
「先生、タイムアップです。」
「……送る。」
やっぱり、答えは出してもらえないまま、自宅近くまで送ってもらいました。
先生から答えがもらえるまで、待ってますね?
カルエゴ先生?