第1章 あなたへ
暫く探し回った。
全然居ないんだから。
外は日が大分落ちた。
人はまばらで、先生達もほとんど帰ったようだ。
もう、カルエゴ先生も帰っちゃったかな?
ちょっと、残念に思う。
別の日でも良いのだけど、バレンタインデーと言う日に渡したかった、と言う拘りがあった。
諦めて帰ろうと思った。
とぼとぼ、と言い表せるように歩いていたと思う。
そんな私に声をかけてきたのは、探してた人物。
「帰るのか?」
散々探してたのに、
「何処に隠れてらしたんですか?あっちこっち探してたんですよ?」
「……準備室にいた。」
「そうなのですか?バビルスは教室とか多いから、探しきれてなかったんですね。でも、良かった。
お渡ししたいものがあって。」
大きな紙袋から個別に分けた小振りの紙袋を出した。
「お口に合えば良いのですが。」
「……何故くれるのだ?」
紙袋を受け取った先生は、そう問いかけてきた。
返答に困った。
「えっと、御世話になってるかたに配っているので、」
「何故、今日なのだ?」
「…えっと、」
何故、と聞かれた。
「先程、シチロウにあった。
お前が、お菓子を配ってる話を聞いた。
……今日は愛を囁く日なのだろう?」
「えっ!」
「違うのか?」
バラム先生は混ぜこんで話したようだ。
気まずい方の理由を。
「……あっちこっちに愛を囁いているのか?」
「ち、違います!」
何て言えばいいのか、
この場を切り抜けられる言葉を探した。
ガサゴソとカルエゴ先生は紙袋の中身を確かめた。
カルエゴ先生には皆とは違う内容で渡してる。
トリュフチョコレート、特別仕様で作った。
1つ口に入れた。
「甘いな。」
甘いと言いながら、味わっている。
「!?」
先生の顔が近づいて来たと思ったら、キス、された。
舌が入ってきて、チョコと香り付けのリキュールの匂いが鼻を抜けた。
口の中のチョコレートがなくなるまでキスは続けられた。
漸く、離れたと思うと
「俺は、お前が気に入っている。」
衝撃発言。