第15章 薔薇の花言葉
何も話してくれない入間の後を黙ってついていく。
あれ?
ここの廊下って、こんなに長かったっけ?
違和感。
何時もの感覚より歩いた気がするころ、
ようやく、応接間のドアが見えてきた。
ドアの前には、オペラさん。
「オペラさん。ご用は何ですか?」
「…カルエゴくんが中でサリバン様とお待ちです。」
「えっ、何か注意を受けるのかしら、」
「さあ、中へどうぞ。」
冷や汗が出てくる。
オペラさんが私の肩にポンと手を置いた。
「大丈夫です。怖いことは何もありません。」
そう言われて、少しだけ、肩の力が抜ける。
ドアノブに手をかける。
えぇ~い、ままよ!
野となれ、山となれ!
覚悟を決めて、ドアを開け放つ。
目をぎゅつとつぶって、中に入った。
直ぐ、鼻孔に最近、嗅ぎ慣れてしまった薔薇の香り。
でも、応接間には薔薇を飾ってなかったはず。
恐る恐る目を開ける。
眩しい光が飛び込んできて、そこは、見知った応接間でわなかった。
「き、綺麗…」
日の光が、差し込む教会のチャペルを連想させるステンドグラスの窓が対角線上の壁にあって、
その下に、何時もとは風貌の違うカルエゴ先生らしき人がたっていた。
先生は、ステンドグラスを背にして立っているから、
逆行で、表情が見えない。
先生に向かって延びる一本道。
ゆっくりと進む。
ふと、辺りを見れば、薔薇が所狭しと飾られていた。
部屋中を埋め尽くす薔薇の香りの正体。
何が、起ころうとしているのだろうか?
胸の鼓動は、耳元に有るんじゃないかと思うぐらいに激しく打っていて、痛いぐらい。
先生の元にたどり着く。
「カルエゴ先生、ご機嫌いかがですか?」
「……少し、…いや、かなり緊張している。」
珍しい。
あまり感情を表さないかの人が、緊張しているとか。
「大丈夫ですか?」
「ああ。…隣に。」
「?はい。」
先生の隣に来るように言われて、一段だけ高くなっていた段を登り、隣に立った。
「すぅーはぁーすぅーはぁー」
「???」
先生は深呼吸を繰り返す。
そんなに緊張するぐらいの事を今から伝えるのかな?
何時もの先生とはかけ離れ過ぎる行動に、よっぽどの悪いことなのだと勝手に決めつけた。