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魔入間短編

第13章 七夕



夜空を見上げて、
唐突に思い付いたことがあって、ス魔ホを取り出した。

〔明日の夜、少しお時間いただけないでしょうか?〕
〔……どうした?〕
〔ご、ご相談したいことがありまして、〕
〔昼間では駄目か?〕
〔誰にも聞かれたくないことなので。〕
〔……解った。〕

約束を取り付けた。

おじいちゃんに

「今日は、帰るの遅くなるから」

と伝えれば、

「どうしたの?」

と聞いてくるから、

「星の観察をしたくて、」

嘘は言ってない。

「そう?おじいちゃんも付き添おうか?」
「大丈夫。友達も一緒だから。」

何とか誤魔化した。

夜が待ち遠しくて、日中はそわそわしてた。


夕方。
皆が下校するのを王の教室の屋上から眺める。

ス魔ホで、19時に植物塔の屋上を待ち合わせ場所に指定した。
後、二時間。
何処に隠れていようか。

ぼっーとしてたら、夕焼けは少しづつ、トパーズオレンジからコバルトブルーのコントラストを描き始めた。
そろそろ植物塔へ移動しようと荷物を持って、フラクタルで飛び上がった。

認識阻害グラスをして、花見会場の隅っこにうずくまっていた。
見回りの先生がやって来たが、スルーしていった。

ス魔ホの時計をみる。
時間はもうすぐ約束の時間。
はぁードキドキする。

約束の時間。
待ち合わせの相手はまだこない。

更に30分。
落胆する。
約束したけど、来ないか。
涙がにじみだす。
からかってると思われたのかもしれない。
正直に言ったら、来てくれただろうか?
いや、あの人なら絶対来ない。
こうでもしないと来てくれないと思ったから、相談とか言って、呼び出したのに。

空を見上げたら、昨日と同じように星は瞬いてる。

約束の時間から、更に一時間。
流石に、諦めよう。
零れた涙をガシガシ拭いて、立ち上がる。

長時間座っていて、お尻が痛くなった。
体もバキバキだ。

手すりにもたれ掛かって、下の方を眺めた。
未練たらしい。

なかなか動けないでいたら、

「……まだ、居たのか?」

後ろから待ち人の声がした。

少し、息が上がってるような気配。

「…走ってこられたんですか?」
「…………約束していたからな。」

カルエゴ先生は、謝罪の言葉をくれた。
学校の野暮用で、と言葉を濁したが、きっと、理事長関係なのだろう。
無駄に言い訳はしなかった。
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