第12章 プロポーズの日
いまさら、関係を正してしまうことに抵抗があって、ずるずると本音を聞けないままで居る。
勿論、肉体関係はない。
先生は、一度も手を出してきたことはない。
軽いスキンシップはある。
ボディータッチや手を握ったり。
ハグ、位までならどんだけでも。
それ以上の事はなにも。
キスすらしていない。
気持ちは知っているが、恋人になりたいかと言われたら、そうじゃない。
そんなことをカルエゴ先生から言われたら、ショックで、学校に来たくなくなるかもしれない。
だから、…私は、迷っている。
「……着いたぞ。」
「はい?」
深く思考の海に潜ってる間に、目的地についていたようだ。
声をかけられるまで、全く気がつかなかった。
「……わぁーきれぇー」
降り立ったのは、見晴らしの良い高台で、眼下には光の宝石が瞬いていた。
「気に入ったか?」
「…はい。」
「…最近、何かと元気がないから、心配している。」
「…すみません。」
「責めているんじゃない。ただ、心配していると言うことを伝えたいだけだ。」
「…ありがとうございます。」
「……なぁ?俺では、お前の支えになれないか?」
「えっ?」
「俺は、バビルスの教師だ。だから、1生徒を特別扱いなどできない。その信念で今まで生きてきた。
だから、今まで、お前にも、1生徒として接してきたつもりだ。だが、いつの間にか、1生徒の枠を越えて、特別扱いになった。こんなことをするのは、お前だから。」
先生は、膝を付き、小さな箱を掲げ、
「どうか、俺のただ1人の存在になってくれ。
俺のただひとつの拠り所となってほしい。
ミユキ、お前がバビルスを卒業したら、結婚しよう。」
「!?」
先生の真剣で、でも、少し緊張して照れているその表情に、私は、何も言えないぐらいに胸一杯だった。
言葉が出ない私は、返事の代わりに先生に抱きついた。
やっと、紡げたのは、
「はい、」
と、だけだった。
「大事にする。この世界の誰よりも。」
先生が抱き締め返してくれて、私達は、強く抱き締めあった。