第6章 ホワイトデー
「あ、あの、その、」
ドアを開ければ、そこには、ミユキが居た。
「……何だ。」
「えっと、……帰られる所ですよね?」
「見れば解るだろう。」
「そ、そうですよね。」
「何か用事だったのだろう。」
「そう、なんですが、」
用事が有るらしいが、全く用件を話さない。
だんだんイライラしてくる。
「用が無いなら、退いてくれるか?」
「……は、はい。」
素直に退くから、
「…誰かに言われて来たのか?」
「あ、バラム先生に、言われて。」
「………はぁ、」
何でもお見通しか?
俺が、まごまごしてたのは。
一度部屋の中に戻り、引き出しに仕舞い込んだものを取り出す。
今度こそ部屋を出るために明かりを消し、
ドアに施錠魔術をかけると、
「お前は帰らないのか?」
「…帰ります。」
「途中まで送る。」
「……お願いします。」
遅くなったときに遭遇すると、自宅近くまで送るのはお決まりで、この事に遠慮してもカルエゴはミユキの話を聞こうとしないので、無駄な抵抗になるため、早々に諦めている。
長い廊下を会話もなく歩く。
当直の先生に挨拶をして、門を出た。
「……少し、歩かないか?」
「……はい。」
飛べば数分。
歩くと数十分。
会話は相変わらずなくて、空を見上げれば、すっかり月が出ていた。
「……今日は、色んな奴がお前と居たな。」
「はい。…皆さん、この前のお菓子のお返しをしてくださって。」
「……そうか。」
また、会話は途切れる。
サリバン邸の灯りが微かにみえた。
後、何分ぐらい一緒に居られるのかな?
後、門まで数メートル。
もう、耐えられない。
「先生、もうすぐなので、ここまででいいです。
ありがとうございました。」
返事も聞かないで行こうとするから、
「まて、」
咄嗟に手を掴む。
「この前の菓子の礼だ。……俺も、渡したかった。」
か細い声で言われて、振り替えれば、
キス、されて。
「今度、このキスの意味の説明、させてくれ。」
「は、い、」
「では、またな。」
「お、おやすみなさい。」
もう、見えなくなっていた先生。
渡された物を握りしめて、最速だったんじゃないかと思うぐらい早く走って、部屋に駆け込んだ。
ドキドキしながら
ベッドの上で正座して、渡された物を開ければ、
「か、可愛い~」
出てきたのは、