第5章 化粧(カルエゴ)
ドレッサーの前で、久しぶりにメイク道具を広げて、メイクをしてます。
「よし。」
「おはようございます、入間様、ミユキ様。
……ミユキ様、今日はどうなされたのですか?」
「えっ?何か変?」
「いえ、本日は、何処と無く雰囲気が違う気が致しまして。」
「あっ、解る?今日はメイクをしてみたの。
どうかな?」
「……大変お美しゅうございます。」
「あ、ありがとう。」
はにかんで笑ったあの方の笑顔は、それはそれは、入間様に並んで、破壊力がございました。
後にそう語った側近。
「おっ?ミユキっち、今日は一段とキレイじゃん。」
「お美しい!」
「何々、男でも出来たの?」
「ミユキちゃん、何てキレイなの?」
「そ、そうかな?そんなに褒められても、」
「粛に!」
教室に入ると、凄くチヤホヤされまして、化粧1つでここまで違うと、何だか、居心地が悪くなった。
移動教室の合間にも見知らぬ悪魔達に呼び止められて、話しかけられる。
化粧1つでどうしてここまでガラッと変わった?
お昼など、人が食べてるのに、まわりには男女構わず集まり、話を聞いてるか聞いてないか構わず、ピイチクパアチクと話しかけてくる。
食べた気にはならなかった。
休み時間、様々な悪魔が後を着いてくる。
ほっといて欲しいのに、何処にでも着いてくる。
「ごめんなさい。ついてこないでくれませんか?」
「何で?」
「良いじゃん?」
「気にしないで。」
気にしないで、じゃなくて、こっちが気になるから、ついてこないで欲しいの。
言っても話が通じない。
誰も居ないところに行こう。
それには後ろの人たちをまこう。
もう、化粧何てしない。
角を曲がれば、出会い頭に誰かにぶつかる。
「あ痛い、」
「……貴様、」
尻餅つくまではいかなかったが、なかなか痛かったです。
「か、カルエゴ先生。申し訳ありません。ボーッとしてました。」
直ぐ謝ったが、ギロリと睨まれた。
後ろのギャラリー達は蜘蛛の子を散らすように去っていった。
「わぁ、凄い効力。」
「何だ?」
「いえ。」
カルエゴ先生の眼力に感謝。