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黄金の草原

第7章 いま一度めぐりあわせて賜び給へ




「それじゃあ、俺たちもそろそろ行こうか」


明かりが消えた館の外側を周って、5人は正門に移動する。

噴水を通り過ぎて、門の前で2人を振り返る。


「何故でしょう、少し感慨深いです」


陽露華が突然そう言った。


「門は違うけど、暁夫様は私達の旅立ちに、やっと立ち合えましたね」
「……そうだな」


暁夫は笑っていた。陽露華も笑顔で答える。

梅花も百合子も居ないが、確かに、今度は立ち合えた。


「銀邇さん、私は……」


紅子が口を開けば、銀邇は背を向ける。
公任が代わりに謝った。


「ごめんね? 彼、気に入らない奴はとことん視界に入れたくない主義なの」
「いえ、いいんです。私が全て悪いので」


紅子は反省していた。自分がいかに愚かしい人間だったかを。


「陽露華もごめん。痛かったよね?」
「私は大丈夫です。紅子様、喉は大丈夫ですか?」
「あなたは傷つけてきた相手にも慈悲があるのね。……私よりよっぽど大人だわ」


紅子は陽露華を抱き寄せた。
陽露華は紅子のたわわな果実に顔を挟まれて赤面する。


「気を付けてね。……特に公任さんには」
「ふふ……はいっ」


紅子は気付いていた。陽露華を抱き寄せた時、公任が「いいな」と呟いていた事に。

紅子は陽露華を離して頭を撫でた。


「じゃあ紅子様、暁夫くん。百合子様によろしくね」
「はい」
「おう」


公任は既に門を出ている銀邇に「何か言う事はー?」と囃し立てると、銀邇は公任の爪先を踵で踏んだ。


「いったー!」
「……っ、2回も怪我させて悪かった」


公任が割と大袈裟に痛がっているのを横目に、銀邇は初めて紅子を認めた。

銀邇はさっさと歩き出してしまった。
公任は慌てて追いかけようとしたが、陽露華を待つ。
陽露華は暁夫と紅子に一礼して、公任と銀邇を追った。

暁夫と紅子が門を閉め、館の玄関に入ると、杖をついた百合子が立っていた。

驚いた暁夫と紅子は言葉を失ったが、百合子の言葉に笑顔で賛成した。


「百合子様、手紙を預かっております」


暁夫の声が玄関に響いた。




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