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黄金の草原

第2章 世の中にさらぬ別れのなくもがな千代もと嘆く人の子のため




「じゃ行くか」
「どこに!?」


銀邇の突然の発言に公任は素っ頓狂な声を上げた。
銀邇はさも当然のことのように答える。


「こいつの母親の所。場所分かるんだろ?」


陽露華は頷いた。躊躇った様子で。

公任は首を横に振った。


「いやいや! 陽露華ちゃん嫌そうじゃん! どう見ても母親となんかあるよ! 銀ちゃんの目はどうなってるの!?」
「うるせえ。俺に委ねたのはどこのどいつだ」
「俺ですよ! ここのいる公任です!」
「異論は?」
「ない!」


やはり漫才だ。
陽露華は今度は笑わなかった。


「陽露華ちゃん、歩ける? 捻挫の事もあるし」


公任の問いに陽露華は唸った。平常時の痛みは無いが、歩くのはまだ困難である。


「わかった。俺と銀ちゃんで代わりばんこでおんぶするよ。下駄もなければ歩けないしね」


陽露華は頷いた。
公任は身なりを整えて、陽露華をおんぶする。
銀邇も身なりを整えると、人が使った痕跡をなるべく消した。

銀邇が雑木林を一周見渡すと、気がついた。


「来た」
「どっちだ」
「北西」
「予定通り。……東に向かうよ」


銀邇は公任と言葉を交わすと、走り出した。
公任も走り出し、陽露華は振り落とされないよう、公任の背中に必死に掴まる。




目指すは東。

またあの地に、足を踏み入れることになるとは……。




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