第2章 失いたくないあなただから
動きが止まった私を、師範は了承したと取ったのかそのまま歩き出した。こうなったらもう逆らえない。
しかしこれ怖いな?
師範が私を落とすなんてことはないと信じたいが、あああ、揺れる度に落ちそうで怖い。
恐怖心の方が勝ってしまった私は、師範に自分から抱きついた。いやちょっとそれは語弊があるといいますか。師範の首に腕を回した。
そう、それ。
「!……」
「すみません師範!その、揺れる度に落ちそうで怖くって……」
「俺がお前を落とすと思っているのかね?」
「いえ!これっぽっちも!ですがお許しください!」
半泣き状態でしがみつく私の頭上から
「ふっ」と鼻で笑うような声が聞こえた。
「別に構わんよ。お前に抱き着かれて嫌なら、
そも、こんな事しておらんが。」
「ふぇ……」
今、なんともマヌケな声が出た。
はっずかしい。穴があったら潜り込んで埋まりたい。
「世話になった胡蝶。失礼する」
「はーいお疲れ様でした」
しのぶちゃんがニコニコしながら手を振ってくれた。