第2章 失いたくないあなただから
「なんだ、じゃありません。恋人の睦事ならお家に帰ってから思う存分してください。さん、伊黒さんも来られたことですし、今日は帰られますか?」
チラリと師範を見ると目が合った。
師範がコクリと頷いたので、しのぶちゃんに帰ると伝えると、笑顔で頷かれた。
絶対よからぬ事を考えてるしのぶちゃんの顔だ。
だがしかし、どうやって帰るというのだろうか。私は右足の捻挫がまだ痛むし上手く立てない。師範の肩に腕を回させてもらうか……?
いやしかし、師範は私より少しばかり身長が
お高いので、バランスが悪い気がするが……。
(師範162cmだが私は150cm)
すると、師範が私を抱え上げた。
……うん?抱え上げた?
「なっ、師範!?」
これは以前街中の本屋で見た姫抱きと言うやつでは!?西洋ではそう言われているらしい。
「あ、伊黒さん。さんの足は完全ではないのであまり家事など無理をさせないようにしてくださいね」
「承知した。おい暴れるな。
歩けんだろう」
「でっ、でででですがっ!」
「これが一番運びやすい。俺に身を委ねてくれ」
「!?」
ボッと顔に火がついたように熱くなった。
師範は私を照れ殺しさせたいのか。