第1章 甘い?甘くない?……やっぱり、甘い
師範はとても尊敬できる人物だ。そんな人にかわいいなんて思うのは失礼だが、でもどうしても可愛らしくて。
「ふふっ」
声に出して笑ってしまった。
慌てて口を抑えるが、それが逆効果だった。
「の笑い声は初めて聞いた。もっと聞かせてくれ」
師範が私の目を見ながらそう言ってきた。
「え、私笑ってますよね?」
「声を出して笑ったところを見たことが無い。」
そうだったか?
「いつも俺の前では緊張している。微笑んではくれるが……やはり、俺は怖いのだろう?」
師範が羽織の袖を口元に持っていきながら目だけを私へ向ける。動きがいちいち可憐だな……と感心する。
「あの、師範。そりゃぁ師範は師範ですから。緊張しますよ。だけど、その…師範を怖いとは思いません。」
私はしっかり師範の目を見据える。